旅の桂林方言講座
※ご注意※
このコーナーは携帯電話が普及する前、地元の人がポケットベル(BP机)で連絡を取っていた当時に制作しました。現在では携帯が普及し地元の人は桂林方言を使いメールでやりとりをすることが一般的になり、桂林方言の漢字表記も標準化されつつあるようなので、それに合わせてこのコーナーも改訂したいと思っております
私が初めて桂林を訪れた時のルートは、香港から中国入りして広州から列車で桂林に入るというものでした。
当時私は、中国語は普通語も広東語も全く知らない状態で、英語と旅の会話集で何とかなるだろうと考えていました。持って行った会話集は、アジア用で、英語や北京語、広東語などが選べるようになっていました。広州では広東語の会話集を使って何とかなりました。
しかし、桂林に入って最初に困ったのは、さてここでは広東語、北京語どちらの会話集を使えばいいのか、ということでした。昨日まで広東語の会話集を一生懸命使って来て、一晩列車に乗って着いた土地で広東語が通じないとは思わなかったのです。
桂林では地元の人(本地人)はどちらかというと北京語に近い、「桂林語(桂林方言)」を使っています。北京語もよく通じますが、かなり南方のなまりがあります。広東語は使われず、ほとんどの人には通じないそうです。
そんな事とはつゆ知らず、またここでも暫らくの間は一生懸命広東語の会話集を棒読みしていました。
という訳で開講です。講座といっても専門的なものではなく、私が桂林でよく耳にする旅のコミュニケーションに必要な「桂林語(桂林方言)」(以下、中国語にならい「桂林話」と記す)を中心にご紹介してゆきたいと思います。
桂林では北京語(普通話)が十分通用します。ただ、「桂林話」を使えば、時々物が本地人の値段で買えたり、思いがけないコミュニケーションがとれたりと他にもいいことがあるかもしれません。
対象は、中国語の基本「ピンイン」と「四声」程度をご存知の方、であれば会話集的にはお使いいただけるものにしてゆきたいと思います。 コツは、ちょっと早めに、あたかも本地人の如く自信を持って言うこと、でしょう。
さらに専門的な事をご存知の方や、これは桂林話でどう言えばいいの?等ございましたらゲストブックに是非お書き込み下さい。 一、基本編 1.巻舌音 一般に南方の人が話す言葉は、普通話であっても巻舌音が不明瞭になります。
例えば、 「我 是 日本人」 : Wo shi Riben ren (私は日本人ですの意味) の場合、巻舌音の「h」が抜け、 → Wo
si ... さらに桂林話では「r」は「y」に変化し → Wo si Yiben yen となります。 カタカナで無理に表すと、ウォー シー リーベンレン が、桂林話では、 → ウォー スー イーベンイン となるような感覚です。 2.四声 桂林話では普通話の四声が変化しています。
例えば(以下@ABCは桂林方言を北京語の四声を使って発音した場合の北京語の四声を示す)、 普通話の数字、 一:@ 二:C 三:@ 四:C 五:B 六:C 七:@ 八:@ 九:B 十:A 百:B 千:@ 万:C は、桂林話の四声では、 → 一:B 二:A 三:@ 四:A 五:C 六:B 七:B 八:B 九:C 十:B 百:B 千:@ 万:A
のようになります。 先程の 「我 是 日本人」 の例では、 → WoC siA YiB benC yinB のようになります。
四声の変化については単語それぞれで違いますので、ひとつひとつ見てゆく必要があります。 ここ迄で、ひとつ問題が出て来ました。
「十」 と 「四」 の区別の問題です。 桂林人の話す「普通話」の「十:shi」は、巻舌音の「h」がぬけて、si A になります。
そうです、「桂林話」の「四」と発音も四声も同じ si A です。 実はこれでよくだまされました。 例えば、四元前後のものの値段を聞いて、「si:A
kuai」と桂林話で言ったのを十元と言ったと勘違いをして多めに払ってしまうといった具合です。桂林の人はもちろん知っています。 数字のことです。他にも4と10のトリックを使って色々な事が予想されますので、当講座を受講された皆様は、桂林で「四」又は「十」が出て来たら、くれぐれもご注意ください。
3.桂林話独特の言葉の使い方 桂林話では、普通話の 「不」 は、 「没」 になるといった、普通話ではしない言葉の使い方がされます。
例えば、普通話で 不要 (いらないの意味) は、 桂林話では、 → 没要
: meiA yaoA になります。 桂林で物売りなどにしつこく付きまとわれた場合、「不要!」と言ったらいつまでも付いて来るでしょう。
そこで、当講座を受講された皆様は「没要!」といいましょう。すぐに諦めて退散くれるかもしれません。 ちなみに、普通話の 「没有」 (ないの意味) は → 「没得 : meiA de」 になります。 このような例は数多くあります。また一番面白いところでもあるでしょう。
以上、三つの点が「桂林話」を知る上での基本になると思います。 ただ、やはり実際に現地で桂林の人の話す言葉を聞くのが一番の勉強になるでしょう。
▲ 二、実用編 それでは、実際のケースでは「桂林話」はどのようになるのか見てみましょう
(陽朔口音ベース)
* ピンインと声調は桂林方言を北京語のピンインと声調に当てはめた場合のもので、西南官話本来の声調も別にあるそうです
(解説)
#1 : 普通語の chi は → 桂林話 ci → 陽朔話 qi になる
#2 : 「十」や「是」などの
shi は → 桂林話 si → 陽朔話 xi になる
#3 : L (エル)の発音は → N (エヌ)に聞こえる
発音のポイント(上級編)
#4 : kai,
cai, mai, kuaiなど、[子音(声母) + ai ] の発音では、
ai の発音は 「アイ」 ではなく 「エィ」 のように聞こえます。 (例) kai
→kエィ : cai → cエィ : mai → mエィ : kuai → クゥエィ となるような感覚でしょうか。 このへんに桂林話の「粋」を感じますね。江戸っ子の「べらんめぃ!」の「めぃ」に似ていると思われます。
実際に現地で地元の人の言葉を是非聞いてみて下さい。 今回はこのへんで講義を終了します。 今後も使えそうな語句を増やしてゆきたいと思います。
語句の数が多くなったら整理・分類もするつもりです。 何かお気付きの点等ございましたら、ゲストブックやメールでお知らせ下さい。 情報提供・ご協力 waishanさま
tianbianさま 夜雨流星さま ゴダイゴのスタッフさま 他,本地の桂林人・陽朔人の皆さん 2003年8月26日
改訂
2008年6月22日 改訂
Tokuji Shibata
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